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アラフォーからの挑戦状。

ところが僕は振り出しに戻る

こんにちは、アラフォーマンです。ルーマニアのいなか街にある雑居ビル廊下の片隅に滞在を決めて1時間ほど経ったでしょうか。現在21時を少し回ったところです。

実は僕、昔新宿の公園でホームレスさんにスカウトされたことがあるんです。きっとそっち方面に才能が向いているんでしょうね。

住めば都とはよく言ったもので、硬くて冷たい床も、窓から吹き込むすきま風にも慣れて、気持ちもだいぶ落ち着いてきました。このまま明朝まで何ごともなく過ぎさってほしいものです。

ところがどっこい、ことは願ったようにはいかないものです。階下でドアを開ける音がしたかと思うと、続いて階段を上る誰かの足音が近付いてきました。

足音は僕のすぐそばまでやってきて、そしてふいに止まりました。男は僕に問いかけました。「何やってんだ?」ごもっともな質問です。

何とか事情を説明しようとしましたが、彼は英語が話せないようです。僕の拙いルーマニア語では「ぼく 寝たい ここ」と言うのが精一杯。その理由なぞ到底説明できません。

僕はドアを指指し、「ぼく、話した。彼、知ってる」と言いました。男は部屋に入り中の人と話し始めました。お願いです、どうか無事におさまってください。僕の都を奪わないでください。

数分後、男が部屋から出てきて言いました。「Go hotel!」

え?一瞬状況がよく飲み込めませんでしたが、身振りから判断するに、どうもホテルに連れていってくれようとしているみたいです。でも、インターネットで調べた限りでは近くにはホテルはなかったような。英語で検索したからでしょうか?

彼の後をついて車まで行ったとき、聞きました。「ホテル、あるの?」「ああ」なんとよかった。ホテルは本当にあったんだ。

しかし、何て良い人なのでしょう。廊下に寝ていたホームレス風貌のルーマニア語を解さない見ず知らずの外国人をホテルまで連れていってくれるなんて!人の情ほど温かいものはないですね。

Go hotel!

そして車は走り出しました。小さな街の明かりは1分と経たずに森の闇に変わりました。

「どこへ行くの?」「フィリアシのホテルだ(Filiași, 隣町)」

グーグルマップによると、ストレハヤからフィリアシまでは約30kmの距離。やっぱりそこまで行かなきゃホテルはないんですね。

そして20分ほど走ったころ、フィリアシの街に着きました。ストレハヤはスーパーマーケットが1軒しかないような小さな街でしたが、フィリアシには3軒ぐらいありそうです。うん、ここならホテルも…あるんですよね?

僕の思いとは裏腹に、車はあっという間に街を通り過ぎました。時間にして約3分。実にあっさりしたものです。

車を停めて、彼は言いました。「グーグルマップで調べてくれ。ホテル、フィリアシ」ああ、場所がわからなくなったのですね?まあ隣町のホテルの場所なんてわからなくて当然です。

僕は言われた通りに検索しました。検索しましたが、どうもグーグルマップでは見つからないようです。ん?おかしくない?グーグルマップに登録されてないホテルなんてありますか?だってホテルでしょ?

もしかして、ここにホテルはないんじゃないかな…、恐る恐る僕は言いましたが、いかんせん言葉の壁、うまくコミュニケーションがとれません。彼は再び車を走らせ始めました。道行く人に聞き、洗車中のおじさんに聞き、警察に道をたずねました。

聞こえてきた会話の断片から推測するに、どうもホテルらしきものはあるらしい?でも大きくなくて?今営業しているのかわからない?そんな感じのようです。

そうしてさまようこと1時間。僕らはついにそこにたどり着きました。ここまで長かった。でも、戻ってきたんだ。床屋の入った雑居ビルの廊下に。

一回りして戻ってしまったよ。僕の都はやっぱりここだったか。まぁそれも構わないさ。

そう思って廊下で寝支度を始めていると、彼が戻ってきて僕を呼びました。

連れて行かれたのは倉庫として使われているらしき埃っぽい部屋。その片隅には布団のないベッドが置いてありました。

ベッドです。これが探していたベッドです。

「ここで寝ていいの?」「ああ」

彼は誇らしげに答えると、ついでに毛布も貸してくれました。わあ、なんて素敵な寝床なのでしょう!探していたものはときに意外と近くにあるのかもしれませんね。

僕はもう寝ます。みなさんおやすみなさい。今日はぐっすりと眠れそうです。

コメント

  • 武勇伝ですね!昔、貧乏一人旅で、夕方遅くの最後の宿を外人とコイントスで決めたのを思い出しました。くれぐれも身体には気をつけて!

  • ISさん、こんにちは。今年もよろしくお願いします。
    宿をコイントスで奪い合い!なんともギャンブラーですね。負けた方はどうなったのでしょうか。

  • いいねー。らしさ全開だね!
    超ウケるんですけど〜

    トラブルは旅の甘美なスパイスね〜

  • グッチさん、こんにちは。あけましておめでとうございます。
    実にアラフォーの旅らしいエピソードでした。いくつになっても落ち着きなんていらないですね!

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