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アラフォーからの挑戦状。

落とした財布は戻ってくるかも!拾得届出率は93%

無い!無い!どこにも無い!
どこかに財布を落としてしまった!

財布の中にはクレジットカードに免許証、健康保険証も入ってたのに。現金もおろしたばっかりだったから被害は更に甚大だ…。

頭が真っ白になる瞬間です。金銭的な損失に加えて、煩雑な事務手続きを行わなければいけないというダブルパンチ。警察に銀行に、何回会社を休んで出かける必要があるのでしょうか。

でも、まだ望みは消えたわけではありません。こんな言葉を聞いたことはありませんか?「日本は落とした財布が戻ってくる魔法のような国だ」と。
実際、先日友人が財布の入ったバッグごと電車に置き忘れたときにも、中身も全て返ってきました。僕自身も過去に財布を4度紛失して、そのうち2回は無事手元に戻ってきています。

親切な人が拾ってくれれば戻ってくるかも…。かすかな希望にもすがりたいですね。
さて、実際はどの程度の割合で財布が戻ってくるのでしょうか。

日本の遺失物の状況は?

警視庁が遺失物の届け出数と拾得物の届け出数の年間の記録を公表しています。
ちなみに、警視庁とは東京都の警察のことです。大阪府警や愛知県警と同じカテゴリーの組織ですよ。
警視庁 遺失物取扱状況

遺失届と拾得届

遺失届と拾得届
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/kaikei.html

上図において、黄色が拾得届点数、緑が遺失届点数を示しています。財布は左から4番目。警視庁の統計によると、2018年に遺失届の出された財布約40万件に対し、拾得物として警察に届けられた財布は約37万件。実に93%の届出率です。
ここには遺失届を提出していないものはカウントされていませんが、それを差し引いて考えても非常に高い値ですね。正直ここまで高いと思っていなかったので驚きました。

そしてグラフからは、証明書と財布、携帯電話以外は、遺失届点数より拾得届点数の方が大幅に上回っていることが読み取れます。100%を大幅に超える拾得届率。
カメラや貴金属、電気製品などは諦める人が多いようですが、警察に行ってみれば意外に届けられているかもしれません。諦めないで確認してみましょう。

現金は戻ってくる?

落とした財布が戻ってくる可能性が高いことはわかりました。さて、中身の現金も無事なのでしょうか…?というとちょっと事情が異なるようです。

現金の返戻率
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/kaikei.html

上図は現金の拾得届額と遺失届額のグラフです。平成30年(2018年)のデータを見ると、遺失届額が84.1億円に対し、拾得届額が38.4億円となっています。返還率は46%。財布自体の返還率に比べると低くなっていますが、それでも十分高い値ですね。
財布の返還率と現金の返還率に差がつく具体的な理由は明らかではありませんが、推察すると、最初に発見した人が現金を抜いて財布は捨て置き、次に発見した人が警察に届けるケースなんかがありそうですね。また、小額なら届け出すけれど、額が大きくなると行動を変えるという人もいるかもしれません。いずれにせよ、46%の現金が戻ってきているという現状は驚がくに値することだと思います。

さらに、このグラフからはポジティブな情報も読み取れます。2009年には37%だった返還率が、年を追うごとに割合が高まっていき、2018年には46%となっています。拾ったお金を持ち主に届ける人が増えている。日本人が精神的に豊かになってきていることを表していると思います。

東京オリンピックの招致プレゼンで

2020年には東京でオリンピックが開かれます。気付けばもう来年。あっという間ですね。
オリンピックの開催地は開催候補国がオリンピック委員会にアピールし、委員の投票によって決まります。東京へのオリンピック招致に向けたプレゼン大会が2013年にあったのですが、覚えているでしょうか。瀧川クリステルさんの「お・も・て・な・し」が流行語大賞になったあれです。

実は、委員の心を動かしたのは、得体のしれないおもてなしという言葉よりも、落としたお金が戻ってくるという事実が衝撃だったのだと言われています。それぐらい、日本人は世界に安全を誇れるのだということですね。

このプレゼンは、日本人が効果的にプレゼンを行った例として、高木徹著『国際メディア情報戦』でも紹介されています。いかに周りを動かすか。そのためには、どのように情報を使うのか。
情報戦略の重要性について、メディアの最前線で戦ってきた著者の経験を背景に、圧倒的な臨場感で読み解きます。

世界の国々の状況は

落とした財布がどの程度返ってくるかということについて、世界の国々をきちんと比較できるようなデータはありません。日本のように警察などが落とし物を管理してそのデータを公表していれば良いのですが、国によって落とし物対応のシステムも様々なので、比較するのは難しいのでしょう。

ただ、いくつか興味深い実験データがありましたのでご紹介します。

赤ちゃんの写真の入った財布は戻ってくる可能性が高い

どのような財布だと落とし主に届けられる可能性が高いのかについて、イギリスで行われた心理実験があります。

Telegraph – How to ensure lost wallets are returned (英語)

この実験によると、普通の財布の返却率は15%。しかし、中に赤ちゃんの写真が入った財布はなんと88%の割合で戻ってきたという結果でした。確かに、かわいい赤ちゃんの顔を見てしまったら、悪いことをするのは気が引けますよね。
実験では、他にも子犬、家族、老夫婦の写真や、寄付金の証明書なども財布に入れて同様の実験を行っています。どれも赤ちゃんには及ばないものの、何もない普通の財布よりは返却率が高まる効果がありました。

同様の実験は、行動経済学者のダン・アリエリーの著書『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』でも多数紹介されています。例を挙げると、「試験の前に十戒を思い出させるだけで、カンニングをする生徒が極端に減った。いくらでもカンニングが可能な条件にしたというのに」、「現金の1ドルを盗むのは難しくても、コーラ1瓶を失敬するのは良心が痛まない。現金から遠ざかると罪の輪郭が曖昧になる」、「自分1人のために行う不正より、チームのために行う不正の方が大胆になれる。それが、企業の不正の温床となる」といった感じです。非常に読み応えのある本で、自身の行動基準を見つめ直すきっかけにもなりますので、お時間があればぜひ読んでみてください。

12個の財布で実験

世界の都市で、財布を落として戻ってくるかどうかを試した実験です。実験数が各都市12回と非常に少ないのでこれをそのまま鵜呑みにするのは危険ですが、話の種にはなりますね。

reddit – How likely people are to return a lost wallet worldwide (英語)

THE WALLET EXPERIMENT
https://www.reddit.com/r/MapPorn/comments/2rcxce/how_likely_people_are_to_return_a_lost_wallet/

この結果によると、カトリック圏ラテン系の国々で返ってくる望みが薄そうです。そういえば、彼らは道に落ちている財布を見て、「神様からの贈り物だ。感謝しなきゃ」と考えると聞いたことがあります。日本人は「お天道様が見ているので”悪いこと”はできない」と考えますが、そもそも財布をネコババすることを悪いことだと考えてないのであれば、その行動を改めるのは難しそうですね。それが文化だからと一言で片付けてしまうのは少し抵抗があるものの、やはり考え方の違いは大きそうです。

一方、インドは今回テストされた国の中で返却率2位という好結果。12回中9回で財布が戻ってきています。友人のインド人は「インドでは望み0%」だと言っていましたが、そう捨てたものではなさそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
日本は安全な国ということが、データからも裏付けられました。現金も半分ぐらいのケースでは戻ってくると期待できそうです。さらに戻ってくる可能性を高めたいなら財布の中に赤ちゃんの写真を入れると良いかもしれません。

とは言え、まずは失くさないように気を付けることが一番ですね。
はい、僕自身5回目の紛失を起こさないように気を付けます。みなさんも、どうぞ油断なさらずに。

最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは今日はこの辺で。

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